1.2.1  リップ形パッキンおよびスクィーズ形パッキン

(1)Uパッキン

(a)形     状

(イ)断面は、小断面および大断面タイプがあり、形状的には対称形(ロッド・ピストン兼用)と非対称形(ロッド・ピストン専用)に分かれ、特に油圧機器用の非対称形Uパッキンは溝付である。


(ロ)非対称形溝付Uパッキンの特長

①溝付により、背圧防止が可能である(特にピストン用については効果大である)。
ピストンパッキンは複動形の場合、背中合わせに使用する。この際、背圧(逆圧、Back Pressure)が発生する。これによりパッキンが押し出されてしゅう動側リップがピストンとシリンダチューブのすき間にかみこみ、損傷する場合がある。(図1.2.1および図1.2.2)

<技・製>図1.2.1 背圧発生によりピストンパッキンがかみ込んだところ

<技・製>図1.2.2 リップ部損傷

発生の原因としては、パッキンの漏れの蓄積であるが、この漏れは圧力、温度、ストロークおよびスピード等の要因が複雑に関係して発生するもので、完全になくすことができない。したがって現在のところ背圧を完全に防止することは、不可能であり、背圧が発生したらこれを逃がす方法をとっている。
背圧防止溝付Uパッキンは、背圧防止のための“溝”が付いている。(図1.2.3)

<技・製>図1.2.3 非対称形背圧防止溝付ピストンパッキン(UHP、UNP、MLPタイプ)

②非対称形(専用形)にすることによって、シール性の向上はもちろん、最低作動圧力およびスティックスリップ等が低減され改良がなされた。
③温度によるパッキン寸法変化等の問題がおこりにくい。
④非しゅう動側のパッキン高さが、しゅう動側より高いため、固定性がよい。
⑤欠点としては、専用形(ロッド用、ピストン用)であるため、使用に際しては注意を要する。

(b)スティックスリップ現象(JOHS-112-1978抜粋)

スティックスリップ現象はシリンダの作動中におこるびびり、脈動、息づき等の現象であるが、ときには共鳴して高周波音の発音現象を発生することもある。発生原因はまだ明確化されていないが、定性的に次の要因により発生するようである。

①高速、低速度作動のとき
②しゅう動面(金属)が適切な粗さ(0.8~3.2S)でないとき
③パッキン材料の動摩擦係数が高いとき
④潤滑材が不十分なとき
⑤作動油の粘度が低く、潤滑油膜の破断が生じやすいとき
⑥極端に肉厚のうすいシリンダチューブを用いたり、剛性の低いホースを使用したとき
また、実験的には図1.2.4のような範囲でパッキンを使用すると発生するとの報告がある。

この場合、
D:軸径(cm)
Z:油粘度(kg・s/cm3
V:速度(cm/s)
Pr:パッキン緊迫力(kgf)  である。

<技・製>図1.2.4 スティックスリップの発生


(c)スティックスリップ防止対策

使用条件的にしゅう動速度が遅い場合や、パッキンの両側の圧力差が小さい場合、あるいはしゅう動面仕上が極端によすぎる等のとき、スティックスリップ(びびり)現象をおこすことがある。
これを軽減する方法として、次の方法がある。
①非対称形パッキンの使用
②摩擦係数の小さい材料の使用(たとえば潤滑性ゴム)
③パッキン表面への特殊コーティング


   

戻る