汎用エラストマーFAQ
・エラストマー材料の種類とその特徴を教えてください。
・エラストマー製シールが使用できる温度領域について教えてください。
・エラストマー材料の耐寒性の指針であるTR10とは何ですか。
・シールの漏れ止め原理について教えてください。
・Oリングのつぶししろ(圧縮量)について教えてください。
・エラストマー製シールの主な種類と使い分けについて教えてください。
・往復運動用パッキンの寿命について教えてください。
・圧縮永久歪とはどういうものですか。
・エラストマー製品の作り方について教えてください。
・新しい特徴のあるエラストマー配合には、どのようなものがありますか。
・エラストマー製品の保管に際しての注意事項を教えてください。
・Oリング用の特殊溝(あり溝、三角溝)について教えてください。
Q.エラストマー材料の種類とその特徴を教えてください。
A.エラストマー材料の種類とその特徴については下表をご参照願います。
エラストマー名 | ISO表記 | 長所 | 短所 |
天然ゴム | NR | 発熱性、反発弾力引き裂き強さ | 耐オゾン、耐熱性、耐油性 |
イソプレンゴム | IR | 反発弾力、引き裂き強さ | 耐オゾン、耐熱性、耐油性 |
ブタジエンゴム | BR | 耐摩耗性、反発弾性 | 耐オゾン、耐熱性、耐油性 |
スチレンブタジエンゴム | SBR | 耐放射線性、耐ブレーキ油性 | 耐オゾン、耐熱性、耐油性 |
ウレタンゴム | AU、EU | 反発弾性大、機械的強度、耐摩耗性 | 耐薬品性、耐水性(AU) |
ニトリルゴム | NBR | 耐油性 | 耐オゾン性 |
水素添加ニトリルゴム | HNBR(NEM) | 耐熱性、耐油性、耐摩耗性、耐オゾン性 | 高コスト |
ブチルゴム | IIR | 耐ガス透過性、耐薬品性、耐寒性 | 反発弾性小、耐油性 |
クロロプレンゴム | CR | 耐オゾン性、難燃性 | 耐動作油性 |
エチレンプロピレンゴム | EPM、EPDM | 耐熱性、耐水性、耐寒性 | 耐油性 |
クロロスルホンカ ポリエチレン |
CSM | 耐摩耗性、耐オゾン性 | 耐油性、圧縮永久歪性、耐寒性 |
アクリルゴム | ACM | 耐熱性、耐油性、耐オゾン性 | 耐水性、反発弾性 |
エチレンアクリルゴム | AEM | 耐熱性、耐オゾン性 | 耐油性 |
フッ素ゴム | FKM | 耐熱性、耐薬品性、耐油性、耐オゾン性 | 耐寒性、耐無機塩基性、高コスト |
パーフロロエラストマー | FFKM | 耐熱性、耐薬品性、耐油性、耐オゾン性 | 耐寒性、加工性、高コスト |
シリコーンゴム | VMQ | 耐寒性、耐熱性、耐オゾン性、絶縁性 | 耐ガス透過性、機械的強度 |
フロロシリコーンゴム | FVMQ | 耐寒性、耐熱性、耐油性、耐オゾン性 | 機械的強度 |
エピクロルヒドリンゴム | CO ECO | 耐ガス透過性、耐熱性、耐オゾン性 | – |
Q.エラストマー製シールが使用できる温度領域について教えてください。
A. 一般的なエラストマー製シールが使用される温度領域は、下図のようになります。
Q.エラストマー材料の耐寒性の指針であるTR10とは何ですか。
A. エラストマー材料の弾性が、10%戻った状態をTR10と呼び、低温におけるシール性の限界温度としています。この温度は、下記の手順で測定します。
(手順1) 室温にて試料を伸長し、既に冷却された試験槽に浸漬。
⇒ この状態で硬化します。
(手順2) その後、試験槽の温度を徐々に上げていきます。
(手順3) 硬化した状態から、徐々にゴム弾性が復元していきます。
⇒伸ばした状態から、元に戻ろうと「縮む」状態になります。
(手順4) 弾性が10%戻った状態をTR10と呼び、エラストマーのシール性限界温度としています。
★ TR10の温度と漏れの温度には、下図のような相関関係があります。
これにより、TR10の温度が低温におけるシール性の限界温度の指針となっています。
Q.シールの漏れ止め原理について教えてください。
A. 下図のように加圧時の接触面圧は流体圧力よりも大きくなり、シールが可能となります。
Q.Oリングのつぶししろ(圧縮量)について教えてください。
A. Oリングは約8~35%のつぶししろを与えて使用します。
つぶししろは用途及びOリング太さによって異なり、太さが細いもの程大きい設定になります。
但し、溝に対するOリングの占有率は100%を超えないようにする必要があります。
100%を超えた場合、Oリングのはみ出し損傷を発生することになります。
Q.エラストマー製シールの主な種類と使い分けについて教えてください。
A. シールとしては、一般的なものとして下表のような種類があります。
Q.往復運動用パッキンの寿命について教えてください。
A. 運動用に使用するパッキンの寿命については固定用に使用するガスケットと異なり、寿命に影響を与える諸要素
(摺動条件,相手面粗度,潤滑状態など)が多岐にわたり予測は困難なため、一般的には実機試験などで寿命評価されています。
下表は寿命予測の目安として、汎用シリンダ仕様における実績・経験則・文献等を参考に走行距離にて推測評価したものです。
Q. 圧縮永久歪とはどういうものですか。
A. シール材は、ほとんど圧縮状態にして漏れを止めます。圧縮状態で、高温で使用された場合、外力除去しても回復しない塑性変形(永久歪)を生じます。これが圧縮永久歪です。
また、圧縮永久歪率(CS)は、下図のように計算します。
Q.エラストマー製品の作り方について教えてください。
A. Oリング製品の一般的な作り方としては、下図のような流れになります。
Q.新しい特徴のあるエラストマー配合には、どのようなものがありますか。
A. 以下のような特徴のある配合をラインナップしています。
・高温での圧縮永久歪を改善したFKM (ふっ素ゴム)
・低温領域でもシール性能を発揮するFKM (ふっ素ゴム)
・代替フロンへの耐性を有するHNBR (水素添加ニトリルゴム)
・ハイブリット化を見据えた絶縁性を持つACM (アクリルゴム)
・耐薬品性、圧縮永久歪、耐熱水(蒸気)を向上させたEPDM (エチレンプロピレンゴム)
Q.エラストマー製品の保管に際しての注意事項を教えてください。
A.
(1)エラストマー製品は直射日光・油・水・オゾンなどで劣化します。
使用していない製品はポリエチレン製の袋に入れて保管して下さい。
(2)製品の保管は冷暗所で温度が38℃以上にならないようにして下さい。
(3)長期保管された製品は外観(クラック・硬化・粘りつき等)を確認の上ご使用下さい。
保管許容期間(上記保管状態で)
未使用・・・3年程度
機器・部品に組み込んだもの・・・組み込み後1年程度
Q.Oリング用の特殊溝(あり溝、三角溝)について教えてください。
A.
(1)ありみぞ形状
圧力容器の蓋側(下方向)、フランジ縦型(垂直方向)などの使用に於ける溝からのOリング脱落または飛び出し防止用として多用されています。
溝の詳細寸法については、Oリングカタログをご参照願います。
(2)三角みぞ形状
一般の角形みぞを加工するスペースが無い場合に用いられます。
Oリング装着時のカミ込み不具合を起こし易いので作業時の注意が必要です。
溝の詳細寸法については、Oリングカタログをご参照願います。