(3)ブラックハイパー(No.GF300)
ブラックハイパーGF300はシートガスケットの最終形で、流体や経時による劣化要因となりやすいゴム系バインダーを一切使用していない。厳選された配合とPTFEをバインダーとして使用したことにより、耐薬品性・耐熱性にすぐれ、
長期に渡って良好な性能を発揮する、高機能タイプの製品である。
(a)特長
〈シート色調〉ブラック(プリントカラー:ブラック)
※シートサイズを超えた、大径寸法も製作可能。別途相談のこと。
(b)適用流体
水、海水、熱水、水蒸気、空気、酸(高温の濃硫酸、濃硝酸等の酸化性酸は除く)、弱アルカリ塩類水溶液、油類、
アルコール、脂肪族系溶剤とその蒸気、各種ガス類等。
(c)設計資料
m、y値は、JIS B 8265附属書3に定められているジョイイントシートの値が適用できる。
厚さ(mm) | ガスケット係数 m | 最小設計締付圧力 y(N/mm2) |
3.0 | 2.00 | 11.0 |
1.5 | 2.75 | 25.5 |
0.5 | 3.50 | 44.8 |
流体 | 推奨締付面圧(MPa) |
液体 | 25.5 |
ガス | 35 |
【備 考】
1.締付面圧は、内部流体圧力によるオープニングフォースは考慮されていない、一般的な条件で必要な面圧である。
2.面圧は、ガスケットの接触面積による。
(d)物性値
項 目 | ブラックハイパー | ブラックスーパー | 石綿ジョイントシート | |||||
No.GF300 | No.6502 | No.1500 [参考] |
||||||
厚さ (mm) | 1.5 | 3.0 | 1.5 | 3.0 | 1.5 | 3.0 | ||
常態試験 | ||||||||
引張強さ(横方向)(MPa) | 12.4 | 10.9 | 13.1 | 12.5 | 28.4 | 27.3 | ||
圧縮率(34.3MPa)(%) | 5 | 4 | 9 | 10 | 9 | 8 | ||
復元率(34.3MPa)(%) | 53 | 54 | 67 | 64 | 61 | 55 | ||
柔軟性(縦方向)厚さの倍数 | <2 | <2 | 11 | 12 | 11 | 12 | ||
密 度 (kg/m3) | 2315 | 2262 | 1761 | 1759 | 1880 | 1924 | ||
耐油〈 IRM903 OIL 150℃×5h 〉 | ||||||||
引張強さ減少率 ( %) | -8.9 | 7.6 | 9.2 | 9.6 | 26.8 | 16.8 | ||
厚さ増加率 ( %) | 0.9 | 0.1 | 1.3 | 1.0 | 20.1 | 12.4 | ||
重量増加率 ( %) | 0.7 | 0.6 | 4.4 | 3.0 | 24.9 | 10.2 | ||
耐燃料油〈 JIS燃料油 B RT×5h 〉 | ||||||||
厚さ増加率 ( %) | 1.1 | 0.3 | 4.3 | 2.6 | 14.5 | 10.6 | ||
重量増加率 ( %) | 1.8 | 1.2 | 6.7 | 6.0 | 9.4 | 8.2 | ||
応力緩和率〈 ASTM F-38 締付面圧20.6MPa 〉 | ||||||||
100℃×22h ( %) | 17.7 | 42.5 | 23.5 | 37.8 | 31.0 | 46.1 | ||
200℃×22h ( %) | 37.3 | 67.5 | 41.1 | 65.5 | 39.7 | 53.4 |
【備 考】
物性値はすべて測定値例であり、規格値ではない。
(e)使用可能範囲
バルカーNo. | 温度(℃) | 圧力(MPa) |
GF300 | -200~300 | 3.5 |
【備 考】
1.温度と圧力は、それぞれ個別の使用限界を示している。
2.流体区分、温度により最高圧力が異なる。(下図参照)
(f)高温硬化性能比較
(g)ブラックハイパーNo.GF300圧縮復元特性
(h)常温シール特性
(i)液体シール特性
ガスケットをボルト締結し、水圧5.1MPaを負荷してシール性能を評価した。
シール試験方法 :内圧負荷10分後、ろ紙による漏洩水の検出
試料寸法 :JIS 10K 25A t1.5mm
フランジ面粗度 :Ra=2.0~2.8μm,Rz=10~14μm
締 付 :面圧14.7MPa相当のボルト締め
試 料 | ペーストなし |
面圧 14.7MPa | |
ブラックハイパー No.GF300 |
Seal |
ブラックスーパー No.6502 |
Seal |
ノンアスジョイントシート No.6500 |
Seal |
石綿ジョイントシート No.1500[参考] |
Seal |
(j)熱サイクルシール特性
ガスケットをボルト締結し、下記加熱サイクルを与え、所定内圧を負荷し、シール性能を確認した。
試料寸法 :JIS 10K 25A t1.5mm
フランジ面粗度 :Ra=2.0~2.8μm,Rz=10~14μm
加熱サイクル条件
シール試験方法 :水没法(測定感度=1.7×104 Pa・m3/s)
流 体 :窒素ガス
締 付 :面圧34.3MPa相当のボルト締め
200゜C熱サイクルテスト
内圧(MPa) | 加熱条件 | GF300 | 石綿JS |
0.5 1.0 |
常 温 | 感度以下 | 感度以下 |
1サイクル後 | 感度以下 | 感度以下 | |
2サイクル後 | 感度以下 | 感度以下 | |
3サイクル後 | 感度以下 | 感度以下 | |
5サイクル後 | 感度以下 | 感度以下 | |
10サイクル後 | 感度以下 | 感度以下 |
300゜C熱サイクルテスト
内圧(MPa) | 加熱条件 | GF300 | 石綿JS |
0.5 1.0 |
常 温 | 感度以下 | 感度以下 |
1サイクル後 | 感度以下 | 感度以下 | |
2サイクル後 | 感度以下 | 感度以下 | |
3サイクル後 | 感度以下 | 感度以下 | |
5サイクル後 | 感度以下 | 感度以下 | |
10サイクル後 | 感度以下 | 感度以下 |
(k)圧壊特性
試料寸法 :φ64×φ100
面圧負荷段階 :① 50MPa、②60MPa、③75MPa、④100MPa、⑤125MPa、⑥150MPa、⑦200MPa
フランジ面粗度 :Ra=5.7μm、Rz=22.0μm
圧壊判定 :亀裂の発生
■接面ペースト塗布
【備 考】
1.ペーストはバルカーシールペーストを接面に塗布したもの。
2.長時間水濡れした状態では、圧壊強度が低下することがある。
(l)応力緩和比較
(m)ハロゲンイオンなど含有量
ハロゲンイオン | ブラックハイパー | ブラックスーパー | ノンアスジョイントシート | |
No.GF300 | No.6502 | No.6500 | No.6500AC | |
F- | 17 | <1 | <1 | <1 |
CI- | <5 | 336.8 | 116.3 | 32.3 |
S2- | <0.5 | - | - | <0.5 |
【備 考】
1.上表記載の数値は測定値例であり、規格値ではない。
2.原子力用途における当社内規格値は、F-とCl-の合計が100ppm以下とする。
(n)電気導電性
測定方向 | 比 抵 抗 (Ω・cm) | ||||
ブラックハイパー | ブラックスーパー | ノンアス ジョイントシート |
膨張黒鉛シート | 石綿ジョイントシート (参考) |
|
No.GF300 | No.6502 | No.6500 | No.VF-35E | No.1500 | |
厚さ方向 | 6.0×1012 | 1.0×109 | 5.7×1010 | 1.1×100 | 4.0×1010 |
平面方向 | 3.3×1013 | 1.0×109 | 2.4×1011 | 2.3×10-3 | 1.5×1010 |
【備 考】
上表記載の数値は測定値例であり、規格値ではない。
(o)ブラックハイパーの設計および使用時の注意
ブラックハイパーGF300の正しい使用のために設計や保管、装着時にそれぞれ注意すべき事項を
要約したものである。
▼ 設計時に注意すべき事項
1.ガスケットに十分な締付面圧が与えられるだけのボルト本数と太さ、ならびにガスケット寸法を決定し、
均一な締付面圧の分布になるようなフランジ構造とボルト配分を考えること。
2.フランジの表面仕上げは6.3Ra(参考:25s)程度とすること。過剰に平滑な仕上げがなされた場合、
ガスケットに滑りが生じ、圧壊の原因となる。
3.内圧負荷時にフランジがローテーションのおこりにくい構造と材料、寸法とすること。
4.継手部に無理な熱応力や繰返し曲げ応力のかかる設計は避けること。5.フランジ部にドレンやスケール等のたまらないような配管設計にすること。
6.継手部に振動が伝わらないように配慮すること。
▼ 保管時に注意すべき事項
1.直射日光や新鮮な空気、オゾンに曝されないように冷暗所に保管すること。
2.保管箇所は高温や多湿、腐食環境を避け、ほこりのない清浄な場所を選定すること。
3.ガスケットを釘等に引っかけて吊すと、破損、永久変形の原因となるため、なるべく缶に入れるか
ポリエチレン袋に包んで紙箱にしまうこと。
4.大寸法のガスケットは、丸めずに大きめの平板に挟み水平におくこと。
▼ 装着に先立ち注意すべき事項
1.フランジと配管との直角度を高めておくこと。
2.相対するフランジの軸差を是正しておくこと
3.フランジの変形の有無を調べておくこと。
4.既設装置や配管の継手部でガスケットのみを交換するときは、接合面をきれいに掃除し、
傷の有無を 調べ、もしあれば補修しておくこと。
5.フランジ面の錆を落とし、凹部を補修しておくこと。
6.装着までの保管時や装着作業時にガスケットを傷めないように注意すること。
▼ 装着時に注意すべき事項
1.ガスシールの場合は下記「浸透漏洩防止対策」を参照すること。
2.ガスケットとフランジの間に異物をかみこまないよう清浄な作業現場で装着を行うこと。
3.フランジボルトは、例えば図の番号順に従ってそれぞれを4~5回に分けて徐々に強く締めていき、
最後に全体が均等になるように締め付けること。
4.締め付けには、圧壊に注意すること。
5.特に150Lb 1B以下の小径、ガスケット幅が狭い場合は、ガスケット応力が過大になりやすいので注意すること。
6.ロードアップまたは再スタートの場合には、ボルトのゆるみがないか確認すること。
7.一度漏洩したガスケットをそのまま増し締めしても漏れが止まらないときは、新しいガスケットと交換すること。
▼ 浸透漏洩防止対策
ブラックハイパーGF300は従来の石綿ジョイントシート同様、浸透漏洩がおこるためガスシールの場合は
以下の項目を厳守すること。
1.ガスケット内径側の切り口にもガスケットペーストを塗布すること。
2.締付面圧を35MPa程度とすること。締付面圧確保のため、全面ガスケットではなく、リングガスケットを使用すること。
3.できるだけガスケットは厚さの薄いもの(1.5mm以下)を使用すること。
4.ガスケットペーストを使用する際は「ニューバルフロンペースト」を使用すること。 特にNo.6、No.6Mは、
ブラックハイパーと馴染みがわるいため推奨しない。