1.1.2 セミメタルガスケットおよびメタルガスケット(1)うず巻形ガスケット
うず巻形ガスケットは、高温・高圧用として合理的に設計された高性能のセミメタリックガスケットである。豊かな弾性を有し、装着厚さで締付力を規制できる利点から、火力・原子力発電所やスチームタービン船の
蒸気系はもちろん、石油精製・石油化学工業のプロセスラインや熱媒体油ラインに広く使われている。
このガスケットはV字形断面の金属製フープと仕様に応じて選んだ緩衝材(フィラー)とを重ね合わせ、
うず巻状にかたく巻きこみ、巻きはじめと終りのフープをスポット溶接で固定したものである。
対象フランジに適合するように内・外輪や枝を取り付ける。
標準製品では、フープにステンレス鋼(SUS304)、フィラーに非石綿紙、内輪と外輪に炭素鋼をそれぞれ使用しているが、
用途や要望に応じて次表の組み合わせも可能である。
フープ | 内 輪 | 外 輪 | ||
材 質 | 温度範囲℃ | 使用頻度 | 使用頻度 | 使用頻度 |
SUS304 | -200~450 | ◎ | ◎ | ○ |
SUS304L | -270~450 | △ | △ | |
SUS316 | -200~815 | ○ | ○ | ○ |
SUS316L | -270~815 | △ | △ | |
SUS317L | -270~815 | △ | △ | |
SUS321 | -200~815 | ○ | ○ | |
SUS347 | -200~815 | △ | ○ | |
SUS430 | -200~450 | △ | △ | △ |
アルミニウム | -270~200 | ○ | × | × |
チタン(1) | -200~540 | △ | △ | △ |
ニッケル | -200~760 | △ | △ | |
モネルメタル | -200~800 | △ | △ | |
ハステロイ C276 | ~1000 | △ | △ | |
インコネル600 | ~1000 | △ | ||
炭素鋼 | - | × | ◎ | ◎ |
【備 考】
1.太文字は、標準材料を示す。
2.使用頻度は、次のようになっている。
◎:一般に広く使用されているもの △:時々使用されているもの
○:比較的よく使用されているもの ×:使用されない
3.本表以外の材料については、別途相談のこと。
(a)種類および使用可能範囲
種類と項目 | クリーンタイト No.8590シリーズ |
ライン入りクリーンタイト No.8590Lシリーズ | ブラックタイト No.6590シリーズ |
ホワイトタイト No.7590シリーズ |
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内 容 | 従来の石綿フィラーの代わりに、非石綿の無機質紙を用いたうず巻形ガスケットである。他の非石綿フィラー(バルカホイルやバルフロン)を使用した製品に比較し経済的である。 | クリーンタイトのガスケット部の中間に、バルカホイルテープを巻き込んだうず巻形ガスケットである。バルカホイルを巻き込んだことにより、気密性や耐熱性を著しく向上させている。 | 純黒鉛質(膨張黒鉛)のシール材であるバルカホイルをフィラー材として用いたうず巻形ガスケットである。すぐれたシール性を有し、熱や圧力サイクルに対する追従性にもすぐれている。 | 耐薬品性にすぐれたバルフロン(PTFE)テープをフィラー材に用いたうず巻形ガスケットである。他のフィラー材が使用できないような腐食性流体のシールや、気密性にすぐれているためガス体や真空シールに適したガスケットである。 | ||||
特 長 | ‣石綿フィラーに匹敵する耐熱性がある。 |
‣クリーンタイトよりさ らに気密性にすぐれている。 ‣耐熱性は、石綿フィラーに 匹敵する600℃である。 |
‣気密性にすぐれているためガス体や真空シール性能が大幅に向上する。 ‣熱サイクルや圧力サイ クルに対してすぐれた追従性を有するので、増し締めが少なくてよい。 ‣耐放射線性にすぐれている。(原子力仕様の 製品もある。) ‣極低温時におけるシー ル性がすぐれている。(極低温用仕様は、No.6596VC) |
‣耐食性にすぐれているため、適切なフープ材を選ぶことにより、ほとんどの流体へのサービスが可能である。 ‣気密性にすぐれているため、8590や590シリーズと比較し、ガス体や真空シール性能が大幅に向上する。 |
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用 途 | 石油精製・化学、電力、 ガス、船舶、製鉄等各種産業 における高温・高圧の流体を扱う配管フランジ、 熱交換器、塔槽類、バルブボンネット等各種機器の接合面のガスケットとして適している。 |
クリーンタイトとほぼ同じであるが、気密性、耐熱 性を特に要求される用途に適している。 | 石油精製・化学、電力、 ガス、船舶、製鉄等各種 産業の配管フランジ、熱交換器、バルブボンネット等各種機器の接合面のガスケットとして適している。特に高温・高圧の蒸気、LNG、液体窒素、液体水素等の極低温のガスケットとして適している。 | 石油精製・化学、電力、ガス、船舶、製鉄等、各種産業の配管フランジ、熱交換器、バルブボンネット等各種機器の接合面のガスケットとして適している。特に他のうず巻形ガスケットでは使用できない腐食性流体や酸素のシール、およびガス体や真空シールのガスケットとして適している。 | ||||
使用可能範囲 | 温度 ℃ | -200~500 | 温度 ℃ | -200~600 | 温度 ℃ | -270~450 | 温度 ℃ | -260~300 |
圧力MPa | 30.0 | 圧力MPa | 30.0 | 圧力MPa | 30.0 | 圧力MPa | 20.0 |
【備 考】
1.上記温度範囲は、フープおよび内輪や外輪の材質によって異なる。
2.ライン入りで600℃以上で使用の場合は、別途相談のこと。
(イ)熱交用枝付うず巻形ガスケット
うず巻形ガスケットの内側にメタルジャケット形の枝を取り付けた製品である。マルチパス形多管式熱交換器用の高性能ガスケット
として温度変化の激しい環境や温度・圧力的に過酷な使用条件にも安心して使用できる。
通常のサービスにはNo.8590シリーズで十分であるが、真空、高温、熱サイクルに曝される用途にはNo.6590シリーズが適している。
また強腐食性流体を取り扱うときにはNo.7590シリーズが適している。
なお、枝部のシール性を高めるために、バルカホイルのり付ギャザーテープ(No.VF-70)を両面に貼りつけた製品も製作可能である。
注 うず巻形ガスケット本体にギャザーテープを貼り付ける場合はシール性を阻害する場合もあるため、別途相談のこと。
●寸法と平面形状
枝の形状は任意に製作できるが、寸法上の制約は多少あるので、下記を参照のこと。
※注
(1)内・外輪およびガスケット本体幅の製作範囲は、(d)設計資料を参照のこと。
(2)枝部は要望通りの平面形状に製作可能であるが、曲部の半径はR15以上である。
(3)枝幅(H)は、通常9mm、10mmのいずれかになる。
【備 考】
1.枝部の厚さは、うず巻形ガスケットの本体部の厚さと同じとする。
2.ガスケットの本体と枝の接続部の流体移動を少なくしたい場合には、下記構造のガスケットを使用のこと。(実用新案登録第1041180号)
参考寸法表(単位mm)
胴内径 | ガスケット本体の幅(W) | 枝幅(H) |
400 | 14 | 9、10 |
500 | 〃 | |
600 | 15 | |
700 | 〃 | |
800 | 16 | |
900 | 〃 | |
1,000 | 〃 | |
1,100 | 〃 | |
1,200 | 19 | |
1,300 | 〃 | |
1,400 | 〃 | |
1,500 | 22 | |
1,600 | 〃 | |
1,700 | 〃 | |
1,800 | 〃 | |
1,900 | 〃 | |
2,000 | 25 |
(ロ)異形平面うず巻形ガスケット
通常のバルカタイトと同じ構成であるが、ボイラーのマンホール、ハンドホールや仕切弁のボンネット部等に
使用される異形平面のガスケットである。
長円、だ円、ダイヤモンド、角、梨等いろいろな形状のものがあるが、とりわけ下図のものが多く使用されている。
上例の形状程度であれば任意に製作できるが、極端に曲率半径の小さいものや、直線部の長いものは好ましくないので、
別途相談のこと。
位置決めを正確かつ容易にするために、ガスケットの内径側に適当なワイヤーを装備したものも製作している。
(ハ)ライン入りうず巻形ガスケット
ライン入りクリーンタイト(No.8590Lシリーズ)
[標準形]
[特殊形]
ノンアスベストフィラーの中間部に、バルカホイルフィラーを巻き込んだ製品である。
バルカホイルを巻き込むことにより、フランジに対するなじみ性が増すため、ガスシール性が向上する。
また、内径側および外径側のフィラーが酸素の供給を遮断するため、酸化性雰囲気でのバルカホイルの
酸化が抑制され高温での使用が可能となる。バルカホイルは、図のごとくガスケットの中央部から
外径側に2-4巻(サイズにより異なる)巻き込むのを標準としているが、
上図のような各種形式にて製作することができる。
種類・製作範囲は通常のガスケットと同じであるが、ガスケット幅が8mm以下の場合は、別途相談のこと。
バルカホイルテープの代わりにバルフロンテープを巻き込んだ 製品も製作可能である。