(5)スリッパーシール(No.7740APシリーズ)
スリッパーシールは、しゅう動側にふっ素樹脂(PTFE)製のリングを装備し、非しゅう動側にエラストマーリングを装備した組み合わせシールである。
このシールは、主に油圧機器にて、往復動の外径シール材として利用度が高い。
(a)特 長
①耐摩耗性、耐久性にすぐれる。
②低速でもスティックスリップをおこしにくい。
③リップパッキンとは異なり、二方向の圧力を1個でシールできる。
④機器に装着後、長時間放置しても相手しゅう動面へのねばり付きが少ない。
⑤高圧、高速下での摩擦抵抗の変動が少ない。
(b)ハウジング部設計要領
(イ)材 質
標準材質:
バルフロンリング ・・・・・・・・・・ブロンズ粉末入りバルフロン
バックリング ・・・・・・・・・・・・・・ニトリルゴム(NBR)Hs 70
(ロ)製作範囲
ピストン径:φ10以上~φ1000まで
注 ピストン径φ20未満は分割溝で使用する。 20.6MPa{210kgf/cm2}をこえる場合、およびφ300以上の場合は大断面を使用する。
(ハ)標準寸法
JIS油圧シリンダの寸法規格に基づきφ20~φ250までを標準化している。
(c)用 途
油圧シリンダ、ロータリーおよびスイベルジョイント、その他各種機器の、主に往復動アクチェーターがあり、これらの機器の市場としては、建設機械、油圧ロボット、工作機械、プレス、射出成形機、重機械、鉄鋼、自動車、航空機等がある。
(d)スリッパーシールの装着要領
(イ)装着要領
①ピストン用
a パッキン溝にゴムリングを装着する。
b バルフロンリングを装着する。
バルフロンリングはほとんど伸びないので、ピストン端面にRを取り、押し込むかまたはテーパー治具を利用し押し込むこと。
またバルフロンリングを温めて挿入する方法もあるが、比較的復元性がわるく、 あまり薦められない。
c 復元
バルフロンリングは、伸ばしたときの歪みが残る場合があり、復元させる方法と して、以下を参考のこと。
イ 熱水または熱油に浸す(80℃~100℃程度)。
ロ バンドなどで圧縮する。
単位 mmD | R | a | b |
~100 | 6 | 4 | 0.5 |
~150 | 8 | 5 | 0.8 |
~250 | 10 | 6 | 1 |
~500 | 15 | 7 | 1.5 |
~1000 | 15 | 8 | 2 |
②ロッド用
a パッキン溝にゴムリングを装着する。
直径寸法は、若干大きめに製作しているので、部分的なタマリのないように慣らすこと。
b バルフロンリングを押し込むこと。
バルフロンリングは、極度に折り曲げると、割れ等が発生する恐れがあるので注意のこと。
できるだけテーパー治具を使用のこと。
(ロ)シリンダおよびロッド端部の面取寸法
ピストンまたはロッドを挿入するとき、スムーズにまたバルフロンリングを傷付けないために、シリンダおよびロッド端部の面取りをすること。
Dおよびd | aおよびb |
~150 | 2 |
~300 | 3 |
~1000 | 5 |