(6)ウイルソンシール(No.2560、4560、5560)
回転機器のシールには、通常メカニカルシール、グランドパッキン、およびオイルシール等が主に使用されている。
ウイルソンシールは、低速、低圧用の撹拌機の軸シールとして開発されたもので、従来から使用されていたグランドパッキンでは満足できなかった真空シールが可能なシールキット製品で、軸振れの吸収も可能なため多くの実績を持っている。
(a)特 長
①圧力は通常1.3×10-4Pa~541kPa{10-6Torr~5kgf/cm2}(ただし加圧の場合はグランドパッキン併用形)である。
PV値は、MAX541kPa・m/s{5kgf/cm2・m/s}の範囲で使用が可能である。
②軸ブレの大きい回転軸に適している。(MAX.2mm)
③リップシール材料は、ふっ素ゴムが標準であり、-10~+120℃の範囲で使用できる。
高温仕様については、ウォータージャケット等のアクセサリーを付け、しゅう動部分の温度を120℃以下にすることにより使用可能となる。
④メカニカルシールと比較して安価である。
(b)グランド部設計要領
(イ)形式と構造
基本部品名称
①ボトムアダプタ 標準材質 SUS 304
②スペーサ 標準材質 SUS 304
③トップアダプタ 標準材質 SUS 304
④ウイルソンシール(リップ) 標準材質 FKM
⑤Oリング 標準材質 FKM
⑥グランドパッキン(リング成形品) ノンアス品 No.7202-R
注 ※印はグリース給油穴
以上の形式以外に、使用条件、スペース等によって、別途部品材質を含め、組み合わせることも可能である。
(ロ)ウイルソンシール(リップ)材質
ウイルソンシール(リップ)およびOリング材質は、ふっ素ゴムを標準としている。使用条件によっては、ふっ素ゴム以外のゴム材質を選定することも必要である。
(ハ)寸 法
単位 mm形式 | 内径(d) | 外径(D) | 長さ(L) |
WSV WSP WSK WSJ |
10~30 | d+24 | 各形式により異なる。 |
35~60 | d+34 | ||
65~200 | d+40 |
備 考 標準寸法は寸法編を参照のこと。
(c)ウイルソンシール取扱説明
(イ)ウイルソンシールの点検 ウイルソンシールが届いたら、注文通りのものか、また輸送中に事故がなかったかを、出荷案内にしたがって確認のこと。
(ロ)装着と分解
①装着の前に
(a)軸径・ハウジング外径・ハウジング深さ・ポート位置を寸法通りか確認する。
(b)ポートクチの面取りを大きくする。
(c)軸やスタフィングボックス等を十分洗浄し、ゴミやホコリを除去する。
②装着
(a)(コイルパッキンのある場合)コイルパッキンを挿入する。
(b)ボトムアダプタにグリース塗布したOリングをセットし、挿入する。
(コイルパッキン併用の場合はコイルパッキンの装着具合を確認する)
(c)グリースを塗布したウイルソンシール(リップ)の方向を確かめて、リップを傷付けないように入れ、順次スペーサリングと組み込む。
(リップの位置が所定のスペーサ・アダプタの溝にセットされるようにスペーサを入れて行く)
(d)トップアダプタにグリース塗布したOリングをセットし挿入する。
(e)最後にフランジカバーで押え、ボルトで締め付ける。
※ウイルソンシールキットをスタフィングボックスに装着した後に、軸を挿入する場合(軸先端に必ずテーパをとること)ゆっくりとリップがめくれないように注意する。またコイルパッキン併用の場合は、リップがずれない程度にボルトで締めておく。
(ハ)運転について
①潤滑グリース
(a)ベントン系グリースを使用する。
(b)3カ月に1回程度グリースを補給する。
②コイルパッキン併用の場合
試運転を約30分行い、フランジカバーのボルトを増し締めを行い、異状のないことを確認してから本運転に入る。