ガスケットからの漏洩

ガスケットは、接合部を構成する二つの部材間に装着し、漏れを防止するものである。
そのため、漏れは接面漏洩と、透過漏洩を考えねばならない。


(イ)接面漏洩
ガスケットとフランジからなる接合部材間には、必ず微小すき間が存在する。この微すき間
に対する簡便な近似として、二平面間の放射状流れ(図1.1.13)、および円筒導管の流れ
(図1.1.14) がある。それぞれの流れ(漏洩量)についての換算式を表1.1.10に示す。
ただし表中の記号は以下による。
η:粘性係数(Pa・s) ρ:比重(kg/m3
Po:外径側圧力(絶対圧)(Pa) Pi:内径側圧力(絶対圧)(Pa)
M:モル質量(kg/mol)  R:気体定数8.31(J/mol・K)
T:温度(K) ε:二平面間距離(m)
ro:ガスケット外半径(m) ri:ガスケット内半径(m)
a:円筒導管半径(m) L:円筒導管長さ(m)

<技・製>表1.1.10 漏洩量の換算式… 【備考】 外径から内径への流れを正とする。


<技・製>図1.1.13 二平面間の放射状流れ  <技・製>図1.1.14 円筒導管の流れ 1.1.13


<技・製>図1.1.15 気体の粘性係数  [1.01×105Pa{1atm}]


<技・製>図1.1.16 液体の粘性係数



(ロ)透過漏洩
ソフトガスケットやセミメタリックガスケットは、それ自身が多孔質であるため、溶解を伴って気体が
固体のなかを通過する。この現象が透過であり、透過量Qp  は、次式によって表わされる。

ここに   
 Qp:透過漏洩量(Pa ・m3/s)
 A :透過断面積(m2
 K :透過係数(m2/s)
 r:透過長さ(m)
 Po, Pi:ガスケット外・内径の圧力(Pa)


<技・製>表1.1.11 各種エラストマーおよびふっ素樹脂の各種気体に対する透過係数

温度20~30℃、単位×10 -12m2/s
エラストマー,樹脂種類 He H2 N2 O2 CO2 CH4
天然ゴム 11.0~23.7 37.4~39.5 4.8~6.7 13.0~18.1 94.0~102 22.0
スチレンブタジエンゴム 17.2~18.0 23.7~32.0 4.8~5.2 13.0~13.2 94.0~95.0 16.2
ブタジエンゴム 32.4 4.9~17.0 14.5~14.6 105
クロロプレンゴム 2.4~9.9 9.1~15.4 0.77~0.93 3.0 9.5~20.0 2.0
ブチルゴム 2.6~8.0 4.6~5.6 0.20~0.35 0.99~3.4 3.9~5.2 0.43
エチレンプロピレンジエンゴム 18.0 6.4 19.0 82.0
クロロスルホン化ポリエチレン 2.5~5.5 8.2~8.6 0.68~0.88 1.6~2.1 12.0~15.8 1.3
ニトリル含量18%ニトリルゴム 1.9 48.0
ニトリル含量20%ニトリルゴム 20.0 2.1 6.3 49.0
ニトリル含量27%ニトリルゴム 9.3 12.0~12.1 0.81~0.86 2.9~3.0 23.5~24.0
ニトリル含量32%ニトリルゴム 7.5 9.0~9.4 0.46~0.50 1.8 14.0~14.1
ニトリル含量39%ニトリルゴム 5.2~8.0 5.4~9.0 0.18~0.46 0.70~1.8 3.3~5.7
ウレタンゴム 2.3 5.1 0.40~1.1 1.1~3.7 10.0~30.0
シリコーンゴム 169 203 76.0~460 450~2300
ふっ素ゴム 7.1~16.0 0.05~0.30 0.99~1.1 5.8~14.5
四ふっ化エチレン樹脂 7.8 7.5 0.14~1.1 0.04~3.2 0.12~8.9
四ふっ化エチレン-パーフロロアルキル
ビニルエーテル共重合樹脂
18.0
四ふっ化エチレン-六ふっ化プロピレン共重合樹脂 17.0 1.2~1.6 3.8~4.5 1.3~9.6




<技・製>表1.1.12 漏洩試験方法と可検漏洩量

方法 被試験体
の圧 力  
現 象 可検リーク量
Pa・m3/s
備   考
放置法 加  圧 放置:圧力降下 10-2~10-5 施行法により
大幅 に 異 なる
真 空(1) 放置:圧力上昇 10-5
水 中 発 泡 法  加  圧 泡の発生または蓄積 10-4  
石鹸水発泡法 加  圧 泡の発生 10-4  
水圧テスト法 加  圧 水漏れ 10-2  
アンモニア
ガス法
加  圧 白煙または変色 10-2~10-7 施行法により
大幅 に 異 なる
ハロゲン
リークテスト
加  圧 熱白金線のイオン化→電流計 10-7  
ヘリウム
リークテスト
加  圧 質量分析計→
ディテクターの読み
10-12  
真  空 10-12
石鹸膜流量計 加  圧 石鹸膜の移動→
ディテクターの読み
10-4
注(1)  放出ガスの影響を避けるため、△P/t が一定の勾配となる時点での測定が必要。


<技・製>表1.1.13 ガスケットの漏洩量


   




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