(f)取扱上の注意事項

(イ)ガスケットの締付厚さ
 

①安定したシール性を得るため、長期的に締付力を保持できる。望ましい締付厚さは、次の通りである。締切形フランジの溝深さの目安とする。

ガスケットの呼び厚さ 標 準 締 付 厚 さ
1.6 1.25±0.05
3.2 2.4±0.1
4.5 3.3±0.1
6.4
※別途相談のこと

②異常に大きい端面圧力や配管系の応力、繰り返し応力あるいは熱応力が負荷されたり、増し締めの困難な継手には、締付形より締切形の使用方法の方が適している。上図は、はめ込形フランジとなっているが、高圧のシールでは溝形フランジがよく用いられる。

③締切形で使用の場合、使用圧力によってはJIS B 8265等により求められる締付力では標準締付厚さまで締められない場合があるので、別途相談のこと。

 

(ロ)フランジの表面仕上げ
フランジの表面は3.2a~6.3a(ガスシールの場合は3.2a)に仕上げ、放射状、トラバース状の傷やV溝を付けないようにすること。


(ハ)その他
①JIS10KやJPI・ANS1クラス150のような低圧力段階、もしくは大口径管フランジの場合には、ボルト強度が不足することもあるので、高張力鋼(たとえばSNB7)を使用する等設計時には十分注意のこと。JIS 2K、5K、真空フランジ等には実機で確認のうえ、使用のこと。

②うず巻形ガスケットには原則としてガスケットペーストを塗布しないで使う。ただし、次のような理由でやむなくガスケットペーストを塗布するときは、ガスケット表面にできるだけ薄く均一に伸ばし、締付面圧は70MPa程度にとめること。 また、のり付ギャザーテープ、その他のものを貼り付けるときは、シール性を阻害する場合もあるため、別途相談のこと。

    ・フランジ表面が粗れているとき
    ・フランジにうねりや傷のあるとき
    ・フランジとボルト強度が不足がちなとき

なお、基本形ガスケットを溝形フランジに装着するときの締付面圧はこのかぎりではない。

(ニ)うず巻形ガスケットの取り扱い方法
①保管時の注意事項

    ・ガスケットは、できれば梱包した状態で倉庫に保管すること。
    ・梱包をといたガスケットは、屋外に放置しないこと。
    ・ガスケットは、雨等に濡らさないこと。
    ・梱包をといたガスケットは、不安定な場所に置かないこと。
    ・ガスケットは、曲げたり、ねじったりしないこと。
    ・ガスケットは、直径方向に押さえたり、引張ったりしないこと。
    ・ガスケットは、立てた状態での保管は避けること。

②使用上の注意事項
・内輪、外輪の付かない基本形ガスケット(異形ガスケットを含む)や熱交用枝のメタルジャケット形ガスケットは、わずかな外力で変形することがあるため、取り扱いには十分に気をつけること。
なお、多少の変形においては、そのままフランジ溝に沿わせて装着することにより使用できることがあるので相談のこと。
ガスケットをフランジにセットする際は、無理な状態で取り扱わないこと。特に大口径の場合、破損(バラケ)の恐れがあるので3人以上で慎重に取り扱うこと。

取り扱いに注意を要するガスケットは、以下の通りである。

    a)大口径のガスケット(φ1000mm以上)
    b)内輪または外輪の付いていないガスケット
    c)比較的大口径のガスケットで、フィラー材料がバルフロン(PTFE)テープやバルカホイルテープのもの

・ガスケットの再使用はできない。
・ガスケットは、定期的に取り替えて使用のこと。


(ホ)うず巻形ガスケットのフランジへの装着

①取り付け
・フランジ面には異物のないよう、ブラシまたは布でよく掃除をすること。
・ガスケットペーストは原則として塗布しなくてもよいが、フランジの面粗さ、うねりの大きいとき、ボルト強度の弱いとき等、やむを得ず使用する場合はガスケット本体にできるかぎり均一に薄くのばして塗布すること。ただし、この場合締付面圧を70MPa程度にとどめるよう注意のこと。溝形フランジに使用する場合の締め付けは、このかぎりではない。
・ガスケットは正しくフランジの座にあうようセットし、はめ込み形フランジ、溝形フランジに取り付ける場合には、できるだけ片側に寄らぬよう注意のこと

②締め付け手順
・ボルトの締め付け順序は下図のごとく、対角線の位置のボルトをそれぞれ締め付け、次に直角位置のボルトを締め付ける。この操作を最低4~5回に分けて、順次強く締め付け、片締めのないように注意しながら最後に全体を均一に締め付けるようにする。
ただし、最初の締め付け時には、所要ボルト荷重の25%以上与えないように注意すること。

 


・呼び厚さ4.5mmの製品は、外輪とフランジのすき間量を目安にし、片締めにならないように注意して締め付ける。
・締め付け上の注意事項
  片締めと締め付け不足は、漏洩の原因となる。
特に大幅な片締めは菊形変形を引きおこし、事故原因ともなるので注意のこと。


(ヘ)大口径のガスケットの締め付け
①初期締め付け
大口径ガスケットではガスケット応力におよぼす内圧の影響であるエンドフォース(END FORCE)によるボルトの伸びやそれに伴うガスケット応力の低下が大きく、従来の一定厚さまで締め付ければ内圧はシールできる、といった様式では不具合な点が発生する。そこで、このエンドフォースによるボルトの伸びを考慮して

ボルト全荷重=ガスケット荷重+エンドフォース

となるように、ボルト締めをすること。

②増し締め
常温時に適切と思われる締め付け状態であっても、高温になるとガスケット応力の熱的低下(フィラーの劣化、ガスケットのクリープ等が原因)とボルト応力の熱的低下が複合しシール性が不安定となるので、ぜひ増し締めを薦める。
増し締めはボルト強度が低下している高温時に行うと、ボルトの破損を引きおこす危険性があるので常温時に行うのが好ましく、その際、内圧を抜いた状態であればより適切である。時期としては、漏洩の有無にかかわらず初期加熱後、冷却時に行うようにすること。


(ト)大口径ガスケット(φ1000以上)の持ち方(運搬取り付け時)



(チ)漏洩に対する処置

一般に漏洩の原因としては、

    ①フランジに起因する場合(傷、うねり、強度不足)
    ②ボルトに起因する場合(強度不足)
    ③締め付けに起因する場合(片締め、締め付け不足)
    ④ガスケットに起因する場合(傷、その他)

等が考えられるので、再度確認のこと。

一般的には一度装着されたガスケットが漏洩をおこした場合の処置としては、

    ⅰ増し締めをする。(内圧除去後)
    ⅱ増し締めで効果なければ、ガスケットを取り替える。

の二点にしぼられる。
増し締めが効果なく、ガスケットを取り替える際には、上記①~④項を再確認して、適切な処置を講じること。


   




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