選定時の留意事項

①   流体・温度・圧力
シールする流体に応じ、耐食性のあるガスケット材質を選定すること。
ガスケットによっては、耐食性を有していても流体の性質により使用可能な温度・圧力範囲が異なるために、図1.1.1~図1.1.6により
流体ごとに使用範囲を確認すること。 これは、流体の耐食性だけではなく、浸透性、毒性、引火性、爆発性等を考慮して使用範囲を決めているためである。

なお選定上、特に注意を必要とする流体は、次の通りである。
a.酸素・支燃性ガス:可燃性材料を用いたガスケットは避けるべきである。PTFEフィラーのうず巻形ガスケット、PTFE系ガスケット、銅製ジャケット形ガスケット、金属平形ガスケットが多く使用されている。
b.重合性モノマー:スチレンモノマー、塩ビモノマー等の重合性モノマーにはジョイントシート、PTFE系ガスケットは使用できないことがある。内外輪付うず巻形ガスケット、メタルガスケット、モノマー用特殊ふっ素樹脂包みガスケットを選定すること。
c. スラリーを含む流体:ソフトガスケットはエロージョンにより破損・漏洩することがある。内外輪付うず巻形ガスケットやメタルガスケットを選定すること。
d.熱媒体油:ジョイントシートは、ゴムバインダーが劣化し漏れを生じる。また浸透性が強く、ノンアスフィラーのうず巻形ガスケットでは長年使用していると漏れることがある。膨張黒鉛のシートガスケットや膨張黒鉛フィラーのうず巻形ガスケットが適している。
e.放射性流体:PTFEは、放射線に弱く使用できない。膨張黒鉛は、1×106Gyの耐放射線性がある。放射線量を確認して選定すること。

②   用途・装置
用途や装置により使用されるガスケットはある程度限定される。製造プロセス上重要な箇所であったり、万が一漏れが発生した場合に
周囲に与える影響が大きい箇所等は、信頼性の高いガスケット材質を選定することも必要である。


〔配管〕
フランジは、JIS やJPI などの規格フランジが用いられ、平面(RF)座、全面(FF)座、リングジョイント(RJ)座が多い。
ガスケットの種類としては、ジョイントシート、PTFE包みガスケット、うず巻形ガスケット、リングジョイントガスケットの4種類で、配管用ガスケットのほとんどを占めており、一般的にはこのなかから選定されている。
その他には、特殊充填材入りPTFEガスケット(バルカロンガスケット)と膨張黒鉛シートガスケットが使用されている。
特殊充填材入りPTFEガスケットは、PTFEの欠点であるクリープ特性が大幅に改良されており、熱や圧力変動の頻度が多く、PTFE包みガスケットよりも安定したシール性を必要とする用途、既設配管フランジで、すき間が狭く作業性のわるい場合に用いられる。
膨張黒鉛シートガスケットは、耐薬品性と耐熱、耐寒性にすぐれ、また応力緩和率も小さいために長期間安定したシール性を保持できる。そのためにLNGや液化エチレン等の低温流体のシール、熱や圧力変動の頻度が多い用途や、浸透性の強い熱媒体油のシール等に用いる。


〔熱交換器〕
500~1500mm程度の比較的大口径のメール・フィメール(MF)座や タング・グルーブ(TG)座のフランジが多い。
多管式熱交換器では仕切のための枝が付く形状もある。
ジョイントシート、メタルジャケット形ガスケット、うず巻形ガスケットが主に使用されている。
実績的にメタルジャケット形ガスケットが多く使用されているが、熱や圧力変動の条件が厳しくシールの安定性を要求する場合には、うず巻形ガスケットが適している。


〔バルブ〕
基本的には配管と同材質のガスケットが選定される。
フランジ形状が、FF、RF、MF、TG、RJ座と多種類用いられ、平面形状も丸形だけでなく楕円形などがある。
配管用に多用されるガスケット以外に のこ歯形ガスケット、メタル平形ガスケット、メタル波形ガスケットが用いられる。
高圧用としてプレッシャーシールリングが使用されることもある。


〔塔・槽・反応器類〕
基本的には配管用と同材質のガスケットが選定される。高圧用にメタル平形ガスケット、プレッシャーシール、ダブルコーン形等のガスケットが使用されることがある。


   




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