(3)設計指針
(a)軸径とパッキン箱内径、パッキン幅との関係(b)流体圧力とリング数
通常、使用するパッキンのリング数は、流体の圧力により決まる。 ここに示したリング数は、適正なパッキン幅のものを使用した場合の装着長さの目安を示したもの である。 なお、これらのリング数はパッキン材質や使用条件(種類、温度、周速)等や環境条件(クーリング ジャケット、フラッシング、給油の有無)等により異なるので参考値とすること。
レーティング:ANSI | 流体圧力(MPa) | リング数 |
Class 150 | 2.0以下 | 4 |
Class 300 | 2.0をこえ 5.1以下 | 6(5) |
Class 600 | 5.1をこえ10.3以下 | 7(5) |
Class 900 | 10.3をこえ15.5以下 | 8(6) |
Class 1500 | 15.5をこえ25.9以下 | 10(6) |
Class 2500 | 25.9をこえ43.1以下 | 12(7) |
回転ポンプ軸封の場合
流体圧力(MPa) | リング数 |
0.1をこえ0.5以下 | 3~5 |
0.5をこえ1.0以下 | 4~6 |
1.0をこえ2.0以下 | 5~8 |
2.0をこえる場合 | 6~9 |
【備 考】
( )内はVF-20、VF-20Lとの組み合わせの場合であり、( )内のリング数から、アダプターパッキンの2リング分を 除いたものがVF-20、VF-20Lのリング数となる。
(c)バルブ用グランドパッキンの標準締付面圧
以下に示す標準締付面圧はANSIの水圧試験を満足するための値である。 使用の際の目安とする。
主な用途 | バルカーNo. | レーティング:ANSI Class | |||||
150 | 300 | 600 | 900 | 1500 | 2500 | ||
汎 用 | 8133/8133L | 19.6 | 24.5 | ||||
VFT-22 | 24.5 | ||||||
耐食用 | 7233 | 19.6 | |||||
高温・高圧用 | VFX-15 | 24.5 | 39.2 | ||||
VFC-25+VF-20 | 24.5 | 39.2 | 58.8 | ||||
制御弁用 | 6399L+VF-20L | 19.6 | 34.3 | ||||
VFC-25+VF-20LF | 19.6 | 34.3 | 39.2 |
(d)グランドパッキンの効果的な使用方法
(イ)スペーサーリングの効用
スペーサーリングは下図のようなパッキンのはみ出しを防ぐとともに、浸透漏れ、 背漏れを効果的に防止する利点がある。
通常、はみ出しを防ぐ目的でパッキンの両端 に用いる場合と、パッキンの浸透漏れを防ぐ目的でパッキンとパッキンの間に入れる方法とがある。
また、浸透漏れを防ぐ目的でスペーサーリングを使用する場合、2種類以上のパッキン を組み合わせるのであれば、それらの間に入れることが効果的である。
このスペーサーリングの材質としては主として、PTFE単体および充填材入PTFE、 ジョイントシートなどが用いられる。スペーサーリングの厚さは、通常1~3mm程度 のものを使用する。
(ロ)リング成形品の推奨
リング成形品は、組み込み作業時間の短縮に役立つだけでなく、良好なシール性を維持 するためにも大変重要な役割をしている。
コイル状のパッキンをそのまま使うと、締付力が奥まで伝達されにくく、スタフィング ボックスの手前側と奥側では、パッキンの締付力に大きな差が生じ、これが応力緩和を引きおこして漏れの原因となる。特に締付力がバルブよりも相対的に小さいポンプの場合には、スタフィングボックスとパッキンの背面のなじみが十分にとることがで きず、背漏れの原因となる。
パッキンの性能を十分に引き出すためには、是非リング 成形品を使うことを薦める。
(ハ)パッキンの防食処理
グラファイト系パッキンは、これに接する相手金属面の腐食を促進させることがある。
これは、パッキンに含まれるグラファイト(C)と金属とのポテンシャルの差に起因するもので、グラファイトが相手材の活性化した陽極部に対して陰極材料として働き、 電流密度を増加させるためである。
当社のグラファイト系パッキンは 、このような金属の活性化を抑制するためのアノードインヒビターと、金属を保護するカソードプロテクターとをそれぞれ適量 併用し、広範囲な使用環境における腐食の防止を図っている。