2.4.金属ベローズ
(1)種類と特長
(a)ダイナミックベローズ
ダイナミックベローズとは、当社独自の極薄板溶接技術(厚さ0.03~1mm)によって、 日本で初めて開発された純国産の溶接ベローズである。 このベローズは、円環板状に打ち抜かれた精密な波形プレートの内外径を交互に溶接 して製作されるため、従来の常識をこえた精密で、伸縮率が大きくコンパクトなネス ティングタイプ(密着形)の溶接ベローズである。
(b)断面形状(基本)と各部の名称
波形形状の代表的なものはS、Y、Vがある。
(c)ダイナミックベローズの特長
ダイナミックベローズ | 備 考 | |
材 質 | 溶接可能なものは、 すべて可能。 | ダイナミックベローズに使用される主な材料は 表2.4.1を参照。 |
スパン | 構造からも大きな値が とれる。 | |
山 数 | 無制限 | |
ピッチ | 小 | |
バネ定数 | 直線性がよく、 小さくできる。 | ダイナミックベローズは、内外径の比を大きくしたり、板厚を薄くする等の自由度が高いため、 バネ定数をきわめて小さくすることができる。 また、ベローズ1山当りの歪み量を弾性領域内で設計することにより、直線性にすぐれ、ヒステリシスも小さくできる。 |
単位長さ あたりの 伸縮量 | 大 | ダイナミックベローズは、ベローズコアを1枚1枚 重ねて溶接しているため、密着時における長さが 非常に短くなり、伸長との差である変位量はきわ めて大きくとることができる。 |
体積変化率 | 全密着が可能なため大 | |
耐圧力 | 特殊設計の場合 49MPa {500kgf/cm2G} |
耐圧性は、材料の板厚を増すことはもとより、二重構造や高強度材を用いることで、向上させることができる。 |
耐熱性 | 材料の耐熱性で決まる | |
耐久性 | 特殊設計の場合、 1×109回以上。 | 耐久性は、スパン、変位量、山数等により大きく左右される。 強度の高い柔軟性のある材料と特殊な製造により、従来になかった長寿命のベローズが製作できる。 |
清浄度 | すぐれている。 | 特殊表面研磨および洗浄により、従来にない低ガス 放出の極高真空用クリーンベローズの対応ができる。(例)150℃×24時間ベーキング後、10時間後のガス 放出量 2×10-12Pa・m3/sec/cm2 {1.5×10-11Torr・r/sec/cm2} |
気密性 | すぐれている。 | 溶接部の気密に対する信頼性が高いため、極高真空 に対応できる気密性を有している。 気密性の確認は、ヘリウムリークディテクタにて 漏洩試験を実施している。 標 準 リ ー ク 量:1×10-9Pa・m3/sec {1×10-8atm・cc/sec}以下 最小可検リーク量:5×10-12Pa・m3/sec {5×10-11atm・cc/sec}以下 |
備 考 このダイナミックベローズの特長は、「成形ベローズ」と比較したものである。
(d)ダイナミックベローズの波形形状による特長
(e)主な材料と特長
<技・製>表2.4.1分類 | 材料名称 | 引張強さ Mpa{kgf/mm2} |
耐力 Mpa{kgf/mm2} |
高温耐力 Mpa{kgf/mm2} |
使用頻度 | 標準在庫 | 特徴 |
オーステナイト系 ステンレス鋼 |
SUS 304 | 520{53} | 205{21} | 538℃ 108{11} |
多い | ○ | 耐食性、加工性、溶接性、靱性がよく、信頼性が高いためベローズ材として使用頻度の多い材料である。また、合金成分量の組み合わせの範囲が広いので、それぞれの特長を優先した鋼種の選択ができる。 |
SUS 304L | 480{49} | 175{18} | 538℃ 92{9.4} |
多少 | △ | ||
SUS 316 | 520{53} | 205{21} | 538℃ 118{12} |
多少 | △ | ||
SUS 316L | 480{49} | 175{18} | 538℃ 85{8.7} |
多い | ○ | ||
SUS 347 | 520{53} | 205{21} | 538℃ 138{14.1} |
多少 | △ | ||
セミオーステナイト系 ステンレス鋼 |
AM 350 | 1270{130} | 1034{105} | 427℃ 719{73.4} |
多い | ○ | ステンレス鋼としての耐食性に加えて、析出硬化による強度を付与した高張力ステンレス鋼で、バネ特性、長寿命等の用途に使用されている。 |
ニッケル合金 | インコネル718 | 1240{126.6} | 1034{105.5} | 704℃ 931{95} |
多い | ○ | ベローズ材料としては耐食性、耐熱性に最もすぐれた材料で、モネルは耐酸用、ハステロイC22は耐酸、高温用として使用されている。インコネル718は、耐食性に加え強度にすぐれた材料で、高圧用等の用途に使用されている。 |
ハステロイC22 | 800{81.8} | 400{41.1} | 760℃ 240{24.3} |
多い | ○ | ||
モネル | 500{53.4} | 279{28.5} | 538℃ 157{16} |
多少 | △ | ||
チタン | 390{40} | 295{30} | 500℃ 78{8} |
多少 | △ | 軽量で、中性、アルカリ性、酸化性溶液、および有機溶液に対する耐食性にすぐれた材料である。 |