(6)設計指針
(a)製作範囲
(イ)口 径
任意に製作できるが、超大形製品は輸送上の制約があるため、別途相談のこと。
(ロ)フランジの形状
丸形、角形以外にこれらの組み合わせや異口径のもの、あるいは突合せ形のものも 製作できるので、設計に先立ち相談のこと。
(ハ)面 間
原則として、フレクターの断面構造および特性を標準とする。 ただし、希望により任意のものも製作可能である。
(ニ)設計および使用上の注意
許容範囲をこえる過大な応力や変位が、フレクターに加わらないような設計をする 必要がある。特にフレクターは、他種エスキパンションジョイントと異なり、すぐれた“ねじり” 変位吸収性を有するが、なるべくフランジとカバーの取り付け部に、過大な応力のか からぬような、設計と装着面での配慮が肝要である。
フレクターは輸送や保管に便利なように両フランジ間に、数箇所シッピングバーを 仮溶接、またはセットボルトを仮組みしてあるので、装着完了まで取り除かないこと。 また、このシッピングバーにフックをひっかけて、フレクターを高所に吊り上げるの は危険である。両フランジのボルト穴にワイヤを通すか、適当なアイボルトを取り付 けることを薦める。
粉体や粒子からカバー材を保護したいときは、右図の構造を採用のこと。
外部損傷を受けやすい環境に使用されるときには 外筒か保護格子の併用を薦める。
装着個所付近で溶接や各種作業が行われるときは 適当なカバー(バルカテックス:別売)でフレクター を保護すること。
架設工事の迅速化を図るためには、相手フランジやガスケットもまとめて購入したほうが有利である。内部流体あるいは外部雰囲気中に火焔や灼熱粒子が存在するときは、別途相談のこと。
(b)高温用フレクターの設計要素
■高温用フレクターの断熱効果実験例
(イ)AシリーズのB形(記号)フレクターの断熱効果
300℃程度の温度領域にはB形あるいはBB形フレクターが使われる。
図2.5.2はカバー記号C(フレクターの断面構造および特性)の断熱効果を測定したものである。
断熱材には無機質断熱材を採用している。
<技・製> 図2.5.2
測定箇所 | A | B | C | D |
各点の温度℃ | 250 | 100 | 70 | 25 |
(ロ)AシリーズのCB形(記号)フレクターの断熱効果
300℃をこえる高温領域には、CB形フレクターが使われる。
実験に用いたCB形のモデルは、熱力学上の理論計算をもとに製作したもので、環境条件 もできるだけ実用に近い条件を想定して、高温実験を行っている。
しかし、小規模な実験では、予測の困難な環境条件も考えられるため、コンピュータに よる計算もあわせて実施した。下の表に実験結果と解析結果の概要を示す。
<技・製> 図2.5.3 実験装置概略
<技・製> 図2.5.4 CB形モデルの断面と温度測定箇所
■フレクター各部の温度
実 測 値 | 解析値 | |||
温度測定点H | 100mm | 150mm | 200mm | 200mm |
A B C D E | 350 | 400 | 500 | 500 |
250 | 300 | 400 | 446 | |
160 | 175 | 195 | 205 | |
130 | 130 | 120 | 150 | |
25 | 25 | 25 | 25 |
備 考 この解析に用いた内部および環境条件
内部流速 10m/s
外気流速 0m/s
(ハ)AシリーズCB形フレクターの設計例
外部環境条件の悪い場合、たとえばフレクターの周囲に装置や配管が立ち込み、強制 対流はおろかほとんど自然対流も期待できない場所にフレクターが設置されると、h3は 非常に小さくなると同時にUも小さくなり、結果的に放熱機能が果たされなくなる。 逆に風通しのよい所に設置された場合、h3は大きくなり、十分に放熱効果が得られる。 当社のCB形フレクターは、h3を10kcal/m2hr℃として設計している。また立上りフランジ の高さHは内部流体温度に応じて下表の寸法を採用し、カバー部の所で200℃以下とな るように設計している。
<技・製> 図2.5.5 壁と外気との温度差および風速による境膜伝熱係数
備 考 An Effective Method for cleaning Heat Exchange Bandles. (Oil Gas. J. Feb. 3 1945)より抜粋
(c)高温用フレクターの伝熱解析
高温用フレクターは、その構造からもわかる通り、立上がりフランジからの放熱効果を 利用して、カバー材にかかる温度を200℃以下に抑えるように設計している。しかし 環境条件が極端にわるいと、放熱効果が小さくなり、カバー材は異常な高温に曝されることもある。
外部環境条件の善し悪しが、フレクターの断熱効果にどのように影響をおよぼすかを 知るために、以下に述べる簡単な熱量伝達の計算式でまとめてみた。
壁Ⅱの両側にそれぞれの流体ⅠおよびⅢの境膜が存在し、温度分布はt1、t1′、t2、t3、 t4′、t4になり、この際の伝熱を考えると次の式が導かれる。
(d)反力の算出法
フレクターのカバー(可撓部)は、すべて非金属材料で構成されているため、軸方向 や軸直角方向の反力はきわめて小さくなっている。
代表的なフレクターの反力値は、図2.5.6~2.5.9を参考にして、次のように算出する。
●軸方向の反力WA(kgf)は
WA=KA・π・Dとなる。ただしKA、軸方向の反力常数(kgf/m)
図2.5.6よりKA=20kgf/m
したがって、軸方向の反力は、WA=KA・π・D=20・π・1=63kgf
●軸直角方向の反力WL(kgf)は
WL=KL・π・Dとなる。ただしKL:軸直角方向の反力常数(kgf/m)
図2.5.7よりKL=7kgf/m
したがって軸直角方向の反力は、WL=KL・π・D=7・π・1=22kgf
〔例〕フレクターの仕様
種 類 | A-200 |
寸 法(D) | 呼び径1000mmφ、面間300mm |
変位量(δ) | δA軸方向20mm δL軸直角10mm |
<技・製> 図2.5.6 軸方向(丸形)A-200
<技・製> 図2.5.7 軸直角(丸形)A-200
<技・製> 図2.5.8 軸方向(角形)A-200
<技・製> 図2.5.9 軸直角(角形)A-200
備 考 1.フレクターの反力値は概算を示したもので、あくまでも設計上の目安とすること。
2.角形の軸方向の反力は、丸形と同様の考え方で算出できるが、軸直角の反力は、変位方向の辺のmあたりの長さから求める。したがって1500×1000角フレクターで 1500 mm側が 10 mm 変位するときの反力は、WL= 250・1.5 から求められる。
3.図 2、5、6~図2、5、9 以外のフレクターの反力は、別途相談のこと。
(e)特別設計例
カバーの損傷を防ぐために 外筒をつけた例
軸方向変位量の大きい箇所に 使われた例
丸-角形フランジ組み合わせ の例
経済的でコンパクトにした 耐熱用の例
アングルフランジと突き合せ フランジを使用した例
異径で突き合せ形の例
SS400製アングルにSUS304または 耐食樹脂ライニングを施した例
長面間の例
ジャバラ状のものを必要 とした場合の例
〔丸・角形や口径の大きさに かかわらずに短かいものか ら、ホース状に長いものまで 製作できる利点がある。〕
変位量の大きい箇所に 使われた例